STEMアトリエ / 万有引力 / 解説
万有引力とは — リンゴと月を同じ一本の式で結ぶしくみ
万有引力とは、 質量を持つものどうしが、たがいに引き合う力のことです。その大きさは二つの質量の積に比例し、中心間の距離の2乗に反比例します。式で書くと F=G·m₁·m₂/r²。地上の重さも、月をつなぎとめる力も、この一つの式の中にあります。
机の上のリンゴから手をはなすと、まっすぐ下に落ちます。いっぽう夜空の月は、落ちもせず飛んでいきもせず、ずっと地球のまわりを回っている。まるで別々の出来事に見える二つを、ニュートンは「どちらも地球に引かれているだけ」と見抜きました。落ちるリンゴと回る月を結ぶのが、これから見ていく万有引力の式です。
リンゴと月、ほんとうに同じ力で動いているの?
リンゴは1秒もかからず地面に落ちるのに、月は何十億年も落ちてこない。これでは同じ力には見えません。ところがニュートンは、月も毎瞬ちゃんと地球へ落ちていると考えました。ただ月は横向きにものすごい速さで進んでいて、落ちたぶんだけ地球の丸い表面が下に逃げていく。だから永遠に当たらず、ぐるぐる回り続ける。
落ち方が地表とくらべてずっとゆっくりなのは、月までの距離が遠いぶん引く力が弱まっているからです。同じ力で、距離だけがちがう。それを一本の式にまとめたのが、これから見ていく万有引力の法則です。
重さの正体は、地球があなたを引く力
体重計に乗ると数字が出ます。あの「重さ」は、じつは地球があなたを下へ引いている力そのものです。リンゴが落ちるのも、ジャンプしてもすぐ着地するのも、ぜんぶ地球に引かれているから。この引く力を重力と呼びます。
おもしろいのは、引っぱっているのは地球だけではない、ということ。あなたも同じ大きさで地球を引き返しています。ただ地球はあまりに重くてびくともしないので、軽いあなたのほうだけが落ちる。力は引き分け、動くのは軽いほう ── これがあとで出てくる「作用・反作用」です。
遠くなるほど、引く力は弱くなる
引く力は、近いほど強く、遠いほど弱い。磁石を遠ざけるとくっつく力が弱るのと似ています。ただし重力の弱まり方には、ちょっと変わったクセがあります。距離が2倍になると、力は半分ではなく4分の1。3倍なら9分の1。「距離のかけ算ぶんだけ、いっそう弱まる」と覚えておいてください。くわしい理由は高校の扉で。
リンゴと月は、同じ親に引かれた兄弟
地球はリンゴも月も、同じしくみで引いています。ちがうのは距離だけ。リンゴは地表(地球の中心から約6400km)、月はずっと遠く(約38万km、地球半径の約60倍)にいます。遠いぶん月への力は弱まりますが、力がはたらいていること自体は同じ。だから月も「落ちている」仲間なのです。
つまずきポイント — 直感が裏切る4つの数字
重力は毎日感じている力なのに、いざ数で問われると直感がよく外れます。手のひらに乗るリンゴの重さと、月をつなぎとめる力が「同じ式」だと言われてもピンとこない。下の四つは、その直感がとくに足を取られやすいところです。観測塔の覗き窓で矢印や軌道を見ながら、数字と見比べてください。
距離が2倍になったら、力も半分?
宇宙には重力がない。だから飛行士は浮く?
月は地球に引かれているのに、なぜ落ちてこない?
重い地球の方が、軽い月を強い力で引いている?
現実の応用例 — 潮・衛星・ロケット・体重計
万有引力は、教室の外でずっと働いています。引いては満ちる海、頭上を回る衛星、地球を振り切るロケット、体重計の針 ── どれも「質量が引き合う」という一つのことから説明できます。
潮の満ち引き ── 海を持ち上げる月の手
人工衛星が落ちずに回り続けるしくみ
ロケットが地球を振り切るには
月での体重は約6分の1 ── 重さは場所で変わる
よくある質問
Q万有引力とは何ですか?
質量を持つものどうしが、たがいに引き合う力のことです。リンゴと地球、地球と月、太陽と惑星 ── 重さのあるものなら何でも、目に見えない力で引き合っています。ニュートンが、地上でリンゴが落ちるのも、空で月が回るのも、ぜんぶ同じ一つの法則で説明できると見抜きました。『万(よろず)のものが有(あ)まねく引き合う』ので万有引力。式は F = G·m₁·m₂ / r² で表します。
Q万有引力と重力はどう違うのですか?
ほとんど同じものですが、使う場面で呼び分けます。万有引力は、あらゆる物体どうしが引き合う力ぜんぱんを指す言い方。重力は、ふつう地球(など特定の天体)が物をその表面へ引く力を指します。地表での『重さ』は、地球とあなたのあいだの万有引力そのもの。厳密には地球の自転による遠心力がほんの少し混じりますが、中学・高校ではほぼ同じ力の言い換えと考えて差し支えありません。
QF = G·m₁·m₂ / r² の文字はそれぞれ何を表しますか?
F は引き合う力(単位ニュートン N)。m₁・m₂ は引き合う二つの物体それぞれの質量(kg)。r は二つの中心と中心のあいだの距離(m)です。注意したいのは r が表面どうしの隙間ではなく中心間の距離だということ。G は万有引力定数という決まった数で、どこでも同じ値です。式を読むと『質量が大きいほど強く、距離が遠いほど(2乗で)弱くなる』と分かります。
Qなぜ距離が2倍になると力は1/4になるのですか?
式の分母が距離の2乗(r²)だからです。距離が2倍になると分母は2²=4倍になり、力は1/4に減ります。3倍なら1/9、10倍なら1/100。これは逆二乗の法則と呼ばれ、電球の明るさや音の大きさが遠ざかると弱まるのと同じしくみです。中心から出る同じ量が、半径とともに広がる球面(面積は4πr²)にばらまかれて薄まる、と幾何でイメージすると忘れません。
Q国際宇宙ステーションの中は、なぜ無重力なのですか?
じつは無重力ではありません。高度400kmでも地表の約89%の重力がはたらいています。飛行士が浮くのは、ステーションごと地球へ落ち続けているから。中の人もモノも全部が同じように落ちているので、たがいの位置が変わらず、浮いているように見えるのです。重力がゼロなのではなく『自由落下のなかにいる』状態で、正しくは無重量(むじゅうりょう)といいます。
Q月はなぜ地球に落ちてこないのですか?
月も毎秒、地球へ向かって落ちています。それでもぶつからないのは、月が横向きに猛スピードで動いていて、落ちた分だけ地球の丸い表面が逃げていくからです。落ちる量と地面が逃げる量がつり合うと、ずっと当たらずに回り続ける ── これが軌道です。だから月は『落ちない』のではなく『落ち続けている』のが正確で、人工衛星もまったく同じ理屈で回っています。
Q万有引力定数 G と重力加速度 g は何が違うのですか?
G は宇宙のどこでも変わらない決まった数(約6.67×10⁻¹¹)で、万有引力の式の『つなぎ』の役目をします。一方 g は、ある天体の表面でものが落ちる加速度で、地球では約9.8 m/s²、月では約1.6 m/s² と場所によって変わります。両者は g = G·M / R²(M は天体の質量、R はその半径)で結ばれていて、G は普遍の定数、g はその天体ごとの結果、という関係です。
やってみよう
ここから先は、数字で確かめる番です。観測塔には三つの覗き窓があります。二つの球を並べて矢印の長さを比べる窓、大砲の速さを変えて弾道が軌道に化けるのを追う窓、リンゴと月を上下に並べて同じ式で見比べる窓。学年を切り替えると、出てくるつまみと表示も増減します。
シミュレーション →
質量と距離のつまみを動かすと、引き合う力の矢印や軌道がその場で応じます。「考えてみよう」タブで、動かす前に予測してから確かめると効きます。
月の満ち欠け →
引力が起こす大潮・小潮の大もとへ。月をつなぎとめる力が、海の満ち引きや月の見え方とどうつながるかが分かるページ。
単振り子 →
この記事で出てきた g(重力加速度)が主役のページ。振り子の周期が長さと g だけで決まるのは、なぜかを確かめられます。
参考文献・出典
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)理科編」物理基礎・物理 — 万有引力の法則・万有引力による位置エネルギー・人工衛星の運動
- I. Newton『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』1687年 — 万有引力の法則と「ニュートンの大砲」の思考実験
- CODATA 2018 推奨値 — 万有引力定数 G = 6.674×10⁻¹¹ m³/(kg·s²)
- 国立天文台 暦計算室 — 地球・月の質量と半径、月までの平均距離(約38万km)
- B. P. Abbott et al.(LIGO Scientific Collaboration)2016年 — 重力波 GW150914 の初観測
最終更新日:2026-06-27 — STEMアトリエ
