STEMアトリエ / 単振動 / 解説
単振動とは — 円運動の影として、行ったり来たりする運動のしくみ
単振動とは、 中心からのずれに比例した「いつも中心へ戻ろうとする力(復元力)」によって起きる、規則正しい行ったり来たりの運動のことです。位置をグラフにすると、ちょうどサイン(正弦)の波になります。
ばねにつけたおもり、公園のブランコ、はじいたギターの弦。どれも「中心をはさんで、行ったり来たり」をくり返します。なぜ止まらずに続くのか、なぜ大きく振ってもリズムは変わらないのか ── つまみを動かしながら、目で確かめられます。中学の「等時性」から大学院の「量子の振動子」まで、気になる段からのぞいてみてください。
「行ったり来たり」の正体は?
ばねの先のおもりを引っぱって、手をはなす。おもりは中心を通りすぎ、反対側まで行って、また戻ってくる。これをくり返すのが単振動です。
止まらずに続くのは、おもりが中心からずれるたびに「中心へ戻ろうとする力」がはたらくから。しかもその力は、ずれが大きいほど強い。行きすぎても必ず引き戻され、勢いがついて通りすぎ、また引き戻される ── このくり返しが、規則正しい振動になります。そして驚くことに、この動きは「円をぐるぐる回る点を、横から見た影」とぴったり同じなのです。
揺れの「広さ」と「速さ」は、別のもの
まず言葉をふたつ。中心からどれくらい遠くまで揺れるかが 振幅 (揺れの広さ)。1往復にかかる時間が 周期 (揺れのリズム)。この2つは、つい「大きく揺らせばゆっくりになりそう」と混ざりがちですが、別ものです。
大きく振っても、リズムは変わらない
ばね振り子を大きく振っても、小さく振っても、1往復の時間(周期)はほとんど変わりません。これを 等時性 といいます。大きく振るとそのぶん速く動くので、遠回りしても同じ時間で戻ってくる、というわけです。
振り子時計が正確に時を刻めるのも、この性質のおかげ。シミュレーションで振幅 だけを動かして、周期が変わらないのを確かめてみてください。
ばねが固いほど速く、おもりが重いほどゆっくり
リズムを変えたいなら、ばねの固さか、おもりの重さを変えます。ばねを固くする(ばね定数 を大きくする)と、引き戻す力が強くなって振動は速く。おもりを重くする(質量 を大きくする)と、動き出しにくく止まりにくくなって、振動はゆっくりになります。
「揺れの大きさ」ではなく「ばねの固さ」と「おもりの重さ」がリズムを決める ── ここが単振動の第一歩です。
つまずきポイント — 振幅とリズムが、つい混ざる
単振動でつまずくのは、たいてい同じ場所です。「大きく振ればリズムもゆっくりになる」「端でいちばん速い」── そう思い込んでいると、グラフのどこを見ても腑に落ちません。なので、この二つの早とちりを先につぶしておきます。
振れ幅を大きくすると、リズムも遅くなりそう
F = −kx のマイナスは「力が小さい」という意味?
端(折り返し)で、いちばんスピードが出ている
円運動と単振動は、別々の話
現実の応用例 — 時計もサスペンションも、同じ揺れ
通学のバスがガタガタ道で跳ねすぎないのは、サスペンションのばねが にしたがって、ゆれを単振動で吸っているからです。朝に見た時計の振り子も、ギターが音程をたもつのも、おおもとは同じ「行ったり来たり」。身のまわりは、単振動だらけです。
ブランコ・振り子時計 ── 振れ幅が変わってもリズムは同じ
車のサスペンション ── 重い荷物でゆっさり揺れる
楽器の弦・音叉 ── 速い単振動が「音」になる
地震とビルの揺れ ── 固有振動数と共振
よくある質問
Q単振動とは何ですか?
ばねにつけたおもりを引っぱって離すと、中心をはさんで行ったり来たりをくり返します。このとき、いつも中心へ戻ろうとする力(復元力)が、中心からのずれに比例して働く運動を「単振動(たんしんどう)」といいます。位置の動きをグラフにすると、サイン(正弦)の波そのもの。ばね振り子のほか、小さく振れる振り子、音叉や弦の振動も単振動の仲間です。
Q復元力 F = −kx の「マイナス」はどういう意味ですか?
マイナスは「力が弱い」とか「引き算」という意味ではなく、向きの合図です。おもりが中心より右(x が正)にあるとき、力は左(負の向き)へ。左(x が負)にあるときは右へ。つまり、ずれた向きと反対=いつも中心へ引き戻す向きに働く、ということを表しています。この『常に中心向き』こそが、行ったり来たりが続く理由です。
Qなぜ周期は振れ幅(振幅)によらないのですか?
ばね振り子の周期は T = 2π√(m/k) で、右辺に振幅 A が入っていません。大きく振るとそのぶん速く動くので、遠回りしても同じ時間で戻ってくる ── これを等時性といいます。ただし「振れ幅によらず一定」がきれいに成り立つのは、復元力がずれにきちんと比例する理想的な場合です。振り子の場合は振れ角が小さいときだけ近似的に成り立ち、大きく振ると周期は少し長くなります。
Q「等速円運動の影」とはどういうことですか?
半径 A の円のふちを一定の速さで回る点を、真横から見ると、上下の動きが消えて左右の動きだけが残ります。その『影』の動きが、ちょうど単振動になります。円を一周する時間が、そのまま単振動の周期。だから単振動の式に sin や cos が出てくるし、角振動数 ω は「円をどれだけ速く回るか」を表しているのです。公式の丸暗記から抜け出す、いちばんの近道がこの見方です。
Q単振り子の周期の式と、成り立つ条件は?
長さ L の糸につるしたおもりの周期は T = 2π√(L/g)(g は重力加速度)。式に重さ(質量)も振れ幅も入っていないのがポイントで、「重いほど速く動きそう」「大きく振るほど時間がかかりそう」という直感を裏切ります。ただしこれは振れ角が小さいとき(おおよそ十数度以下)の近似で、大きく振ると周期はわずかに長くなります。
Q共振とは何ですか?身近な例は?
ものには揺れやすい固有の周期(固有振動数)があり、そのリズムに合わせて外から力を加え続けると、揺れがどんどん大きく育ちます。これが共振です。ブランコをタイミングよく押すと大きく揺れるのが身近な例。地震でビルが大きく揺れるのも、地震波の周期がビルの固有周期に近いときで、高層ビルには揺れを打ち消すおもり(同調質量ダンパー)が入っていることがあります。
やってみよう
振幅のつまみだけを、大きく小さく動かす。どれだけ大きく振っても、周期はびくともしません。半信半疑だった等時性が、目の前でほどけていきます。
シミュレーション →
振幅 A・ばね定数 k・質量 m の3つのつまみ。周期に効くのはどれで、効かないのはどれか、いじって切り分ける。
単振り子 →
T = 2π√(L/g) の等時性を、長さ・重さ・振れ幅・重力のつまみで確かめるページ。
三角関数 →
単振動のグラフは sin の波そのもの。振幅・周期・位相が波の形をどう変えるかを描くページ。
参考文献・出典
- 砂川重信『物理の考え方 力学』(岩波書店)— 単振動・減衰振動・強制振動の標準的な記述
- R. P. Feynman, "The Feynman Lectures on Physics, Vol. I"(第21〜25章)— 調和振動子・共振・過渡現象
- D. Hestenes et al., "Force Concept Inventory" (The Physics Teacher, 1992) — 力と運動の誤概念(復元力の向きなど)の体系的な調査
最終更新日:2026-06-25 — STEMアトリエ
