STEMアトリエ / 単振り子 / 解説
単振り子とは — 同じテンポが生まれるしくみ
単振り子とは、 糸やぼうの先におもりをつけてぶら下げ、左右に揺らしたもの。一往復にかかる時間(周期)が、糸の長さと重力でほぼ決まり、おもりの重さや振れ幅にはほとんどよらない、という不思議な性質を持っています。
ブランコ、メトロノーム、スカイツリー、地震計 — みんな「振り子」のなかま。動きを決めているのは、糸の 長さ と 重力 のたった 2 つです。あとで という式にまとまりますが、まずは「何で決まるか」を絵から見ていきましょう。学年バッジは下にあります。気になるところから読んでください。
ガリレオが気づいた「同じリズム」
1583 年、19 歳のガリレオは礼拝中、教会のシャンデリアがゆらゆら揺れているのを見ていました。風で振れ幅が変わっても、なぜか「カチコチ」のテンポは同じまま — それを自分の脈拍で計って気づいたと言われています。振幅が変わっても周期は変わらない、この性質を 等時性 といいます。まずはその不思議を、絵から確かめていきます。
まず、言葉を三つだけ
長さ・振れ幅・周期。出てくる名前は、この三つだけです。
- 長さ L:糸の長さ(おもりの中心まで)。単位は m。
- 振幅 :いちばん端まで揺れたときの角度。単位は度(°)。
- 周期 T:一往復にかかる時間。単位は秒。
たとえば「1 秒に 1 往復」なら、周期 T は 1 秒です。
法則① 重さは関係ない
「重いおもりの方が、早く揺れる気がする」— 多くの人がそう思います。でも、実はちがいます。おもりの重さを変えても、周期は変わらないのです。
これは「重さで決まらないなら、何で決まるの?」という次の疑問に自然につながっていきます。
シミュレーションで、おもりの質量だけを変えて比べてみよう:
どちらもテンポはまったく同じ、ということがその目で分かります。
法則② 長さが周期を決める
周期 T を決めているのは、糸の長さ L と 重力 g。式で書くとこれだけ:
| 記号 | 読み方 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|---|
| T | ティー | 周期(一往復の時間) | 秒 |
| L | エル | 振り子の長さ | m |
| g | ジー | 重力加速度(地球は約 9.8) | m/s² |
| π | パイ | 約 3.14 | (無次元) |
実際に数字を入れてみると:
- L = 1.0 m のとき T ≈ 2.0 秒。だから振り子時計の振り子は、ちょうど 1m くらい。「カチ…コチ…」の片道がぴったり 1 秒です。
- L = 0.25 m のとき T ≈ 1.0 秒。これは音楽でいう BPM 60 のメトロノーム。テンポを速くしたければ、おもりを下げて L を短くすればいい。
法則③ 振幅は「小さいうち」は同じ
では、大きく振ったら一往復は長くなる? これも、ほとんど変わりません。振れ幅が 5° でも 20° でも、周期はほぼ同じ。これが「等時性」のすごいところで、振り子時計が 300 年も正確だった理由でもあります。
ただし、80° のような大きな振幅になると、周期は 1〜2 割伸びてきます。気になる人は大学レベルで詳しく見られます。
身のまわりの振り子(5 つ)
中学レベルの最後に、身のまわりの振り子をのぞいてみましょう。どれも詳しい解説モーダルが開きます。
- スカイツリーの心柱制振 — 高さ 634m の塔の中心にある巨大な柱を“おもり”として使い、塔本体とわざとずらして動かすことで揺れを打ち消す。
- 振り子時計 — 1656 年、ホイヘンスの振り子時計で、誤差が一日十数分から十数秒の桁へ一気に縮んだと言われる。
- メトロノーム — 音楽の BPM は物理の周期そのもの。
- 和歌山の地震計 — おもりが「動きたくない」性質で地震を記録する。
- 和太鼓のバチ — 脱力すると振り戻ってくる力を使うワザ。
つまずきポイント — 重さと長さで勘ちがいしやすい
振り子は道具立てがシンプルなぶん、かえって思い込みが先走ります。「重いほどゆっくり」「大きく振るほど遅い」── つまみを回す前に、この二つの勘ちがいにけりをつけておきます。
重いおもりほど、速く振れる気がする
大きく振るほど、戻るのに時間がかかりそう
長さを2倍にすれば、周期も2倍になりそう
「周期」って、振り子の速さのこと?
現実の応用例 — ブランコから時計、高層ビルまで
「長さでテンポが決まる」── この性質は、理科室を出るとどこで使われているのでしょう。公園のブランコ、壁の柱時計、634m の塔の中に吊られた巨大なおもり。どれも同じ決まりを、ちがう姿で使い分けています。
公園のブランコ
振り子時計
メトロノーム
スカイツリーの心柱制振
よくある質問
Q単振り子とは何ですか?
糸やぼうの先におもりをつけて、ぶら下げて揺らしたものを単振り子といいます。揺れの一往復にかかる時間(周期)が、糸の長さと重力でほぼ決まり、おもりの重さや振れ幅にはほとんどよらない、という性質を持ちます。ブランコや振り子時計、メトロノームも同じ仲間です。
Qなぜ振り子の周期は重さに関係ないの?
重いおもりほど重力に強く引かれますが、その分『動かしにくさ(慣性)』も大きくなります。引く力と動かしにくさが同じだけ増えるので、ちょうど打ち消し合い、テンポ(周期)は重さによらず同じになります。ガリレオが教会のシャンデリアの揺れを自分の脈拍で計って気づいた、と伝えられています。
Q振り子の周期を求める公式は?
周期 T は T=2π√(L/g) で求められます。L は振り子の長さ(m)、g は重力加速度(地球では約9.8 m/s²)。たとえば L=1.0m なら T は約2.0秒です。この式におもりの重さ m が入っていないことが、そのまま『重さは関係ない』を表しています。
Q長さを変えると周期はどう変わりますか?
周期は長さの平方根(√L)に比例します。長さを4倍にすると周期は2倍、9倍にすると3倍。2倍にしても、周期は約1.4倍にしかなりません。長いブランコがゆっくり、短いブランコがせわしないのは、このためです。
Q振れ幅を大きくすると周期は変わりますか?
5〜20°くらいの小さな揺れなら、周期はほとんど変わりません(等時性)。これが振り子時計が正確でいられる理由です。ただし45°、80°と大きく振ると、周期は数%〜十数%のびてきます。きっちり一定なのは『小さい角度のあいだだけ』と覚えておくと安全です。
Q月の上では振り子はどうなりますか?
月の重力は地球の約6分の1(g≈1.6 m/s²)。式 T=2π√(L/g) の g が小さくなるので、同じ長さの振り子でも周期は約2.5倍にのび、ゆっくり揺れます。重力が弱い天体ほど、振り子はのんびり動きます。
やってみよう
頭で「重さは効かない」と分かっても、つまみを回して同時に二つのおもりが同じテンポで揺れるのを見ると、納得の質がちがいます。長さ・重さ・振れ幅・重力を順に動かして、何がテンポを変え、何が変えないのかを仕分けてみよう。
シミュレーション →
長さ・振れ幅・重力をスライダーで動かし、周期がどう変わる・変わらないかを体感する。
単振動のページ →
振り子の往復は単振動そのもの。ばねと振り子を同じ式で表せる姉妹トピック。
三角関数のページ →
単振動のグラフは、結局サインカーブ。波の高さ・周期そのものを動かせるページ。
参考文献・出典
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 物理基礎・物理編」— 単振り子・単振動・等時性の指導順序の根拠として参照
- L. D. Landau, E. M. Lifshitz『力学』(東京図書)— 単振り子・楕円積分による大振幅周期・減衰/強制振動
- H. Goldstein『古典力学』— ラグランジアン・ハミルトニアン形式と位相空間、二重振り子のカオス
- ホイヘンス『振り子時計』(Horologium Oscillatorium, 1673) — 等時性と振り子時計の歴史的出典
最終更新日:2026-06-26 — STEMアトリエ
