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pHとは — 指示薬の色で酸・アルカリを見分ける「水よう液のものさし」のしくみ
pHとは、 水よう液が酸性・中性・アルカリ性のどれにどれくらい近いかを、0〜14 の数字で表したものさしのことです。7 がちょうど中性で、それより小さいほど酸性が強く、大きいほどアルカリ性が強くなります。
理科の実験で、リトマス紙が赤や青に変わったり、BTB の緑が黄色や青に変わったりするのを見たことがあるはずです。あの「色」を手がかりに、酸とアルカリのものさし=pH を、見える現象から式まで順にたどっていきます。色の話だけ読んでも、式まで潜っても、どこから入ってもかまいません。
色から数字へ — リトマスの赤・青が pH につながる
リトマス紙を酸性の液につけると赤に、アルカリ性の液につけると青に変わります。BTB なら、酸性で黄、中性で緑、アルカリ性で青。これらの色は液そのものの色ではなく、指示薬という道具が「この液は酸性ですよ/アルカリ性ですよ」と色で返事をしているのです。
その返事を、ことばだけでなく数字でも表したい——そこで使うのが pH です。色で「どっち寄りか」をつかみ、数字で「どのくらいか」をつかむ。さらにその数字の正体が、水の中の水素イオンの量だと分かると、 という式までひとつながりに見えてきます。色・数字・式の三つを、レベルごとに行き来してみましょう。
性質は大きく3つに分かれる
水にとけたものの性質は、ざっくり3つに分けられます。すっぱい系が酸性、ぬるぬる・苦い系がアルカリ性、そのどちらでもないまんなかが中性です。
- 酸性 … レモン、お酢、炭酸飲料
- 中性 … 純水、食塩水
- アルカリ性 … せっけん水、重そう水
「すっぱい=酸性」はなんとなく分かりますが、なめて確かめるのは危険です。そこで活躍するのが指示薬です。
指示薬は「色で教えてくれる道具」
見ただけでは酸性かアルカリ性か分かりません。そこに指示薬を入れると、性質に応じて色が変わります。よく使うのは次の三つです。
- リトマス:酸性=赤 / アルカリ性=青
- BTB:酸性=黄 / 中性=緑 / アルカリ性=青
- 万能指示薬:赤→黄→緑→青→紫と、もっと細かく
ここは取りちがえやすいところ。この色は液そのものの色ではなく、指示薬からの返事です。同じ透明な液でも、入れる指示薬を変えれば、返ってくる色は変わります。
強さを数字にしたのが pH
「酸性・中性・アルカリ性」だけだと、どのくらい強いかが伝わりません。そこで強さを 0〜14 の数字で表したのが pH です。7 がちょうど中性。7 より小さいほど酸性が強く、大きいほどアルカリ性が強くなります。
身近なものでいうと、レモンはおよそ 2、お酢はおよそ 3、水道水は 7 前後、重そう水はおよそ 8、せっけん水はおよそ 9〜10。すっぱいものほど数字が小さく、ぬるぬるしたものほど大きい、と覚えておくとつかみやすいでしょう。
つまずきポイント — 色と数字と水素イオンが混ざりやすい
数字が小さいほど酸性が強い——この「逆向き」のところで、多くの人が一度つまずきます。色・数字・水素イオンが頭の中でこんがらがる前に、その勘ちがいを先に仕分けておきましょう。
中性(pH7)はただの水で安全、酸性とアルカリ性が危険なもの
pH が「1」ちがうだけなら、たいした差ではない
指示薬の色は、その液体そのものの色だ
濃い酸ほど pH は低い(濃さ=強さ)
現実の応用例 — 花の色から胃ぐすりまで
アジサイの花が赤くなるか青くなるかは、根もとの土が酸性かアルカリ性かで決まります。同じものさしが、水そうの水質にも、せっけんの表示にも、胃ぐすりの効き方にも顔を出します。理科室を出てからのほうが、pH と出会う場面はむしろ多いくらいです。
アジサイの花の色 — 土の pH で青にも赤にもなる
水そう・池・プールの水質管理
「弱酸性」の石けん・シャンプー
食べ物・胃の中と「中和」
よくある質問
QpH は「ピーエイチ」と「ペーハー」、どちらが正しいですか?
どちらも同じものを指します。日本では古くからドイツ語読みの『ペーハー』が広く使われてきましたが、現在の JIS(日本産業規格)や学校教育では英語読みの『ピーエイチ』が正式な読み方とされています。年配の方や理科の現場で『ペーハー』と聞いても、間違いではなく昔からの呼び方です。
Qなぜ pH7 が中性なのですか?
水はごくわずかに電離して、水素イオン(H⁺)と水酸化物イオン(OH⁻)を同じ数だけ出します。25℃の純水ではその濃度がどちらも 1 リットルあたり 10⁻⁷ モルで、これを −log で表すと 7 になります。H⁺ と OH⁻ がつり合っている状態が中性で、その目盛りがちょうど 7 というわけです。なお厳密には、水温が上がると中性の pH は 7 より少し小さくなります(それでも H⁺ と OH⁻ はつり合っているので中性です)。
QpH が 1 ちがうと、どれくらいちがうのですか?
pH は対数のものさしなので、1 ちがうと水素イオンの量はおよそ 10 倍ちがいます。pH3 は pH4 のおよそ 10 倍、pH5 とくらべればおよそ 100 倍も酸性が強いことになります。数字の上では小さな差に見えても、中身は大きく変わっている、というのが pH を読むときのいちばんのコツです。
Qレモンや身近なものの pH は、だいたいどのくらいですか?
あくまで目安ですが、レモン汁はおよそ pH2、お酢はおよそ pH3 で、どちらも酸性です。牛乳はおよそ pH6〜7、水道水は 7 前後でほぼ中性。重そう(炭酸水素ナトリウム)の水溶液はおよそ pH8、せっけん水はおよそ pH9〜10 でアルカリ性です。すっぱいものほど数字が小さく、ぬるぬる・苦いものほど数字が大きい——そう覚えておけば、だいたいの見当はつきます。
QpH の「p」は、何の意味ですか?
じつは、はっきりとは分かっていません。pH は 1909 年にデンマークの化学者セーレンセン(S. P. L. Sørensen)が考え出した表し方ですが、本人は『p』が何の略かを書き残しませんでした。『力・累乗』を意味する power(英)/Potenz(独)/puissance(仏)に由来するという説や、論文の中で試料を p、基準を q と呼び分けた単なる記号だったという説があり、今も決着していません。よく言われる『pondus hydrogenii(ラテン語)』説は、証拠に乏しいとされています。
QpH は 0〜14 の範囲しかないのですか?
いいえ、0〜14 はあくまで日常で出会う水溶液をうまくおさめた便利な目安です。濃い塩酸のように酸性がとても強い液では pH が 0 を下回ることがあり、濃い水酸化ナトリウム水溶液のようにアルカリ性がとても強い液では 14 を超えることもあります。学校では 0〜14 で十分ですが、『絶対にこの範囲の外には出ない』という壁があるわけではありません。
やってみよう
スライダーを動かすと、色が切り替わる境目が見つかります。その段差のところで、「1 ちがうと 10 倍」を頭ではなく指で覚えてください。
シミュレーション →
pH を 0〜14 で動かすと、指示薬の色と、レモン・石けんなど身近な物の位置がいっしょに動きます。色が切り替わる境目を、目でさがしてみよう。
モル(物質量)→
[H⁺] の「mol/L」って何? 粒の数をひとまとめにするモルから、濃度の意味をたどるページ。
濃度 →
「濃さ」と「強さ」はどう違う? うすめると pH がどう動くかの土台になる、濃度のページ。
参考文献・出典
- W. B. Jensen, "The Symbol pH" (Journal of Chemical Education, 2004) — pH 表記と「p」の由来の考証
- 文部科学省 学習指導要領(中学校 理科・高等学校 化学基礎/化学)— 酸・塩基、中和、pH の扱い
- 化学の教科書・参考書のイオン平衡(電離平衡・水のイオン積・緩衝液)の章
- 分析化学の入門書 — 活量・活量係数、pH メーター(ガラス電極・ネルンスト式)の原理
最終更新日:2026-06-25 — STEMアトリエ
