STEMアトリエ / 複素数平面 / 解説
複素数平面とは — 複素数を「距離と向き」で読み直す平面
複素数平面とは、 複素数 a+bi を座標平面上の点として描き、距離と向きという2つの見方で複素数のかけ算を読み解く、数学Cの単元のことです。
灯台やレーダーは、船の位置を「東に何km」「北に何km」ではなく、「何kmの距離」と「どの方角」の組で伝えることがあります。複素数も同じように、実部・虚部という組ではなく、距離(絶対値)と向き(偏角)の組として見直すと、掛け算がまったく違う顔を見せます。前作「高次方程式・複素数」では、i を方程式の中の数として計算しました。ここからは同じ i を方程式の外へ連れ出し、平面の上の点として眺めます。
距離と向きで、位置を伝える
「東に3km、北に4km」という言い方のほかに、「原点から5kmの距離、北北東の方角」という言い方でも、同じ場所を指せます。前者は成分(実部・虚部)、後者は距離と向き(絶対値と偏角)。複素数 z=a+bi も、この2つの見方を両方できる数です。
点をどちらの見方で読んでも同じ場所を指しているのに、掛け算をしたときの答えの見え方はまるで違います。この違いこそが、複素数平面の面白いところです。
点として置いてみる
z=3+2i を平面上の点として置くと、原点からの距離と、実軸から測った向きの2つが見えてきます。距離は「点がどれだけ遠いか」、向きは「点がどちらを向いているか」。ドラッグして位置を変えると、この2つの値がリアルタイムで変わる様子を確認できます。
「数」と「点」、2つの顔
複素数を実部・虚部の組として見るか、距離・向きの組として見るかは、どちらも正しい見方です。計算だけならどちらでも構いませんが、掛け算の意味をつかむには、距離・向きの見方のほうが役に立ちます。それは次の「高校」レベルで確かめます。
つまずきポイント — 「掛け算」の見え方が変わる
「掛け算をすれば、数は大きくなる」——これは、複素数を数として計算しているときには正しい直感です。けれど平面の上で同じ掛け算を追うと、答えは大きさだけでなく向きまで変わります。この「回転」という新顔の動きが、下の4つでよくつまずきの種になります。
iを掛けると、原点から遠ざかっていきそう
複素数どうしの掛け算も、実部・虚部を別々に掛けるだけ
ド・モアブルの定理は、公式として覚えるしかない
n乗根は、平面上にばらばらに散らばっていそう
現実の応用例 — 回転する量を扱う場所で
複素数平面のいちばんの武器は「回転」です。電気の位相のズレ、音の周波数分析、複雑な模様の生成——回転や振動が主役になる場面では、複素数平面がしばしば道具として使われています。
交流回路の「フェーザ図」
信号処理の「回転因子」
マンデルブロ集合の模様
よくある質問
Q複素数平面と、ふつうの座標平面(xy平面)は何が違うのですか?
点の置き方は同じですが、横軸を「実部」、縦軸を「虚部」と決めて読む点が違います。もう一つの違いが、点どうしのかけ算という操作が定義されていること。ふつうの座標平面には「点と点を掛ける」という演算はありません。
Qなぜ複素数の掛け算が回転になるのですか?
複素数の積は「絶対値どうしの掛け算、偏角どうしの足し算」という規則に従うからです。掛ける数の絶対値が1なら大きさは変わらず、偏角の分だけ向きが変わる——これが回転に見える理由です。絶対値が1でなければ、同時に拡大・縮小も起こります。
Qド・モアブルの定理は、何に使えますか?
複素数のn乗やn乗根を、いちいち掛け算をn回繰り返さずに一気に求められます。z^n=r^n(cos nθ + i sin nθ) という形は、絶対値をn乗し偏角をn倍するだけで済むので、高次の計算が一気に楽になります。
Qn乗根が、ちょうどn個あると言えるのはなぜですか?
角度は1周(360°)すると、もとの向きに戻ります。n乗根を探すときは、この1周をn等分した角度を1つずつ順番に試していくイメージです。0番目、1番目…とn-1番目まで試すと、ちょうど1周ぶんを使い切ってしまい、次のn番目はまた0番目と同じ向きに戻ってしまいます。だから、違う点として数えられるのはn個ぴったりで、それ以上は増えません。
Qフェーザ図とは何ですか?
交流回路の電圧・電流を、複素数平面上で回転するベクトルとして描いた図です。電圧と電流の位相のズレは、フェーザどうしの偏角の差として一目でわかります。このページで確かめた「回転+拡大」の仕組みが、そのまま電気工学の計算に使われています。
やってみよう
α のつまみをひねるたびに、z は回転しながら遠のいたり近づいたりします。n を増やせば、単位円の上に正多角形の頂点が一つずつ増えていく。ここは指で試すのが一番早い節です。
シミュレーション →
z をドラッグし、α のつまみで回転・拡大を、n のつまみでn乗根の並びを確かめられます。
高次方程式・複素数 →
複素数を「数」として計算する前作。虚数単位 i の定義や四則演算はここで先に確認できます。
複素解析 →
複素数を変数とする関数を、平面から平面への写像として調べる続編です。
参考文献・出典
- 文部科学省 学習指導要領(現行版)— 数学C「複素数平面」の範囲・扱い
- 数研出版 教育課程関連資料 — 複素数平面の教育課程上の位置づけ
最終更新日:2026-07-20 — STEMアトリエ
