STEMアトリエ / 虹 / 解説
虹とは — 雨つぶが光を分ける「42°のアーチ」のしくみ
虹とは、 空気中に浮かぶ無数の雨つぶに太陽の光が入り、つぶの中で曲がって出てくるときに七色に分かれて見える、光の現象のことです。太陽と反対側の空に、約42°の角度のアーチとして現れます。
雨上がりに、太陽を背にしてふと空を見上げると虹がかかっている。あの七色のアーチが「どこに・なぜ・どうやって」できるのかを、雨つぶ1粒の中で光をたどりながら確かめられます。中学の「太陽を背にすれば見える」から、大学院の「波の干渉でできる過剰虹」まで。気になる段から開いて大丈夫です。
雨つぶ1粒の中で、何が起きている?
虹は、空のどこか一点に立っているわけではありません。太陽を背にして立つと、自分の影がのびる先(太陽のちょうど反対側=対日点)があります。その方向から約42°だけ外側に開いた角度に、雨つぶからの光が集まって、アーチに見える。だから虹は「物」ではなく「角度の現象」です。
ひとつぶの雨を大きく拡大して、光の通り道を追ってみましょう。太陽の光は雨つぶの表面で一度折れ曲がって中に入り(屈折)、奥側の面で内側からはね返り(反射)、出るときにもう一度折れ曲がります(屈折)。この三段階で光全体の向きが変わり、その曲がり具合が色ごとにほんの少し違うので、白い光が赤から紫へと分かれていきます。
虹は太陽の反対側に出る
虹を探すコツはひとつ、「太陽を背にする」ことです。虹は必ず太陽と反対側の空に出ます。前に雨が降っていて、後ろから日が差していると、雨つぶが光を返してくれて虹が見えます。ホースで霧をまいたり、噴水や滝のそばでも、太陽を背にすれば同じ虹が作れます。
太陽が高いお昼どきは、虹が地平線の下に隠れてしまって見えにくくなります。朝や夕方、太陽が低いときほど、大きなアーチが見えやすくなります。
近づいても、虹には追いつけない
虹のふもとまで歩いて行けたら宝物がありそう——でも、残念ながらたどり着けません。虹は決まった場所にある物ではなく、「あなたから見た角度」で決まる現象だからです。近づこうとすると、基準になる対日点も一緒に動くので、虹は同じだけ向こうへ逃げていきます。
だから、隣で同じ虹を見ている人も、本当はその人専用の少しずれた虹を見ています。「自分だけの虹」というわけです。
色の順番は、外が赤・内がむらさき
ふつうの虹(主虹)は、いちばん外側が赤で、内側へいくにつれてだいだい・黄・緑・青と続き、いちばん内側がむらさきです。運がよいと、その外側にもう一本うすい虹(副虹)が見えることがあります。こちらは色順が逆で、外側がむらさきになります。
つまずきポイント — 虹を追いかけて、ここで一度はぐれる
虹のつまずきは、もとは一つに行き着きます。「空のどこかに立っている物」と思ってしまうこと。そこから、見える位置も、色の順番も、近づけるかどうかも、いっしょに絡まります。先に種明かしを読んでおくと、シミュレーションで雨つぶを追うとき迷いません。
虹は空のどこかに「立っている」ので、近づけば下をくぐれそう
虹は雨つぶの表面で光が反射して、七色にはね返る
虹はきっちり七色に分かれている
二重の虹(副虹)は、主虹のうすいコピーで色順も同じ
現実の応用例 — プリズムも分光器も、虹のいとこ
虹そのものを仕事に使う場面は、そう多くありません。でも、虹を生んでいる「屈折と分散」は別です。ホースの霧で作る手のひらサイズの虹から、星の光を波長ごとにほどく分光器まで——光を色に分ける同じ手口が、道具のなかで働いています。
ホースや噴水で、自分で虹を作る
プリズムと分光器 — 光を波長で分ける
ダブルレインボー(副虹)と暗い帯
過剰虹 — 幾何だけでは説明できない縞模様
よくある質問
Q虹はどうやってできるのですか?
空気中に浮かぶ雨つぶに太陽の光が入り、つぶの中で屈折→内部反射→屈折と進んで出てくる——これが虹のはじまりです。このとき光の曲がり方(偏角)が色によってわずかに違うため、白い太陽光は赤から紫へと分かれていきます。多くの雨つぶからの光のうち、約42°の方向に出る光がいちばん強く集まるので、その角度に明るい色のアーチが見えます。
Q虹はなぜ七色なのですか?
虹の色は実際には切れ目なく連続していて、本来は「七色」ときっちり分かれているわけではありません。七という数え方は、ニュートンが音階の七音になぞらえて選んだものとされ、文化によっては六色や五色と数えます。つまり七色は自然が決めた数ではなく、連続したスペクトルに人が区切りを入れた結果です。
Q虹はなぜ丸い(アーチ形)なのですか?
虹は太陽と反対側の対日点を中心に、そこから約42°ずれた方向すべてに見えます。同じ角度の方向を空に描くと円になるため、虹は円(の一部)になります。地上では地面より下が見えないので半円のアーチに見えますが、飛行機から条件よく見ると、まるい一周の虹になることもあります。
Q虹に近づくと、ふもとまで行けますか?
行けません。虹は決まった場所にある物ではなく、自分から見た角度(約42°の方向)で決まる現象だからです。歩いて近づこうとすると、対日点も一緒に動くため、虹は同じだけ向こうへ逃げていきます。同じ理由で、隣の人が見ている虹はその人専用で、あなたの虹とは少しずれています。
Q二重の虹(ダブルレインボー)はなぜできて、なぜ色が逆なのですか?
外側のうすい虹は副虹と呼ばれ、雨つぶの中で光が二回反射してできます。反射が一回多いぶん光の出る向きが変わり、色の並びが主虹と逆(外側が紫)になります。主虹(約42°)と副虹(約51°)にはさまれた空がやや暗いのは、その角度には光が届きにくいためで、アレキサンダーの暗帯といいます。
Q虹はいつ、どちらの空に出ますか?
太陽を背にして、前方に雨が降っている(または霧や水しぶきがある)ときに見えます。必ず太陽と反対側の空に出るので、虹を探すときはまず太陽に背を向けてください。太陽が高すぎると虹は地平線の下に隠れてしまうため、太陽が低い朝や夕方のほうが大きな虹が見えやすくなります。
やってみよう
仕上げに、雨つぶ1粒へ自分で光を通してみます。スライダーを動かすと、約42°で色がぴたりとそろう瞬間が目で追えます。
シミュレーション →
入射点をずらし、波長を変え、反射を1回から2回へ。約42°で色が束ねられ、主虹がぱっと立ち上がる瞬間を、自分の手で出してみる。
空が青いのはなぜ →
虹は屈折、空の青は散乱。光と色をめぐるもう一つのしくみ(レイリー散乱)を見るページ。
微分 →
「なぜ42°だけ明るい」は偏角の最小さがし。傾きがゼロになる点を探す微分のページ。
参考文献・出典
- 久保田広『光学』(岩波書店)— 幾何光学・波動光学による虹と分散の標準的な記述
- M. Born & E. Wolf, Principles of Optics (Cambridge Univ. Press) — 屈折・分散・干渉の基礎
- H. M. Nussenzveig, "The Theory of the Rainbow" (Scientific American, 1977) — 虹の理論の歴史と全体像
- R. L. Lee & A. B. Fraser, The Rainbow Bridge (Penn State Univ. Press, 2001) — 虹の科学史(テオドリック・ファーリシー・デカルト・ニュートン)
最終更新日:2026-06-25 — STEMアトリエ
