STEMアトリエ / 外積 / 解説
外積とは — 2本の矢印から「面に垂直な矢印」を作る掛け算のしくみ
外積とは、 2本のベクトルから、その両方に垂直な新しいベクトルをつくる掛け算のことです。大きさは2本が張る平行四辺形の面積(|a||b|sinθ)、向きは右ねじの法則で決まります。答えが数(スカラー)になる内積に対し、外積の答えは向きを持つ矢印(ベクトル)。ベクトル積・クロス積とも呼ばれ、おもに空間(3次元)で使います。
かたいボルトをゆるめるとき、レンチの柄は長いほうがよく回ります。同じ力でも、握る位置を回転の中心から遠ざけると効きが増す ── この「回す力」を式にすると、押す力と腕の長さの外積になります。外積は、2本の矢印から「両方に直角な、もう1本の矢印」をひねり出す掛け算。回転や面の向きがからむ場面で、何度も顔を出します。回す手の向きから、ねじが進む向きを言い当てられるようになれば、外積はもう味方です。学年バッジで深さを選び、まずは机に寝た2本から3本目がスッと立ち上がる瞬間をのぞいてみましょう。
レンチが教えてくれる、「向きのある掛け算」
数どうしの掛け算は、向きを持ちません。3×5 はただの 15。けれど世の中には、「どっち回りか」「どっちを向くか」まで答えに含めたい掛け算があります。ねじを締める・ゆるめる、こまを回す、ハンドルを切る ── どれも「力」と「腕」の2方向から、「回る向き」という第3の方向が生まれます。
外積は、この「2方向から3つ目の方向をつくる」しくみを、そのまま数式にしたものです。2本の矢印 a・b を入れると、両方に直角な矢印が1本出てくる。長さは2本が張る平行四辺形の面積ぶん、向きは右ねじの法則で決まります。まずは平面に寝かせた2本から、3つ目の矢印がスッと立ち上がる様子を見てみましょう。
2本の矢印は、平行四辺形をつくる
机の上に矢印を2本、根もとをそろえて置きます。a と b。この2本を2辺とみなすと、平行四辺形がひとつ描けますね。外積は、まずこの平行四辺形の「広さ」に注目します。2本をピッタリ重ねると、平行四辺形はぺしゃんこで広さゼロ。直角に開いたときがいちばん広い。「どれだけ開いているか」を測るのが外積の大きさです。
その平行四辺形から、垂直に立ち上がる矢印
外積のおもしろいところは、答えが「広さ(数)」で終わらないこと。その平行四辺形の面から、垂直にニョキッと立ち上がる矢印こそが外積 a×b です。机に寝た2本から、天井に向かって1本立つイメージ。だから外積は、平らな世界(2次元)ではなく、立体(3次元)でこそ本領を出します。
上か下か ── 向きは右手で決める
立ち上がる矢印は、上を向くこともあれば下を向くこともあります。決め方は右手。指先を a から b へ回す向きにそろえて軽く握ると、立てた親指の向きが a×b です。これが右ねじの法則。ねじを a から b へ回したとき、ねじが進んでいく向き、と言いかえてもいい。だから a と b の順番を入れかえると、回す向きが逆になり、立ち上がる矢印も真うしろを向きます。
つまずきポイント — 内積のクセを引きずると迷う
外積でつまずく多くは、内積で身についた感覚をそのまま当てはめてしまう瞬間です。「答えは数」「順番は関係ない」── 内積では正しかったことが、外積では裏返ります。次の四つを、立体ステージで a・b を傾けながら確かめると、どこで感覚がずれたのかが見えてきます。
外積 a×b も、内積みたいに『数』が出てくる?
外積の大きさは、ただ |a|×|b| じゃないの?
順番を入れかえても、a×b = b×a でしょ?
a×b の向きは『なんとなく上』で合ってる?
現実の応用例 — 回す・向き・広さ
「回る」「面がどっちを向く」「張った広さ」── このどれかが問題になる場面では、たいてい外積が裏ではたらいています。レンチからモーター、ゲームの陰影、土地の測量まで、身のまわりの外積を四つのぞいてみます。
レンチとドアノブ ── 回す力の正体はトルク
3Dゲームとアニメ ── 面が『どっち向き』かを外積で出す
モーターが回るわけ ── 磁場の中の電流に働く力
土地やパネルの面積 ── 頂点の座標から一発で出す
よくある質問
Q外積とは何ですか?(簡単に)
外積 a×b は、2本のベクトル a・b から『新しいベクトル(矢印)』を作る掛け算です。できる矢印は、a と b が張る平面に垂直に立ち上がり、向きは右ねじの法則で決まります。大きさ |a×b| = |a||b|sinθ は、2本が張る平行四辺形の面積に等しい。答えが数になる内積とちがって、外積は向きを持つ矢印が出てくるのが特徴です。クロス積・ベクトル積とも呼ばれ、主に空間(3次元)で使います。
Q外積と内積のちがいは何ですか?
いちばんの違いは『答えが何か』です。内積 a·b は数(スカラー)で、|a||b|cosθ。2本の重なり具合・影の長さを表します。外積 a×b は矢印(ベクトル)で、大きさが |a||b|sinθ、向きは両方に垂直。2本がどれだけ開いているか(張る面積)と、その面の向きを表します。cos と sin、影と面積 ── ちょうど対になった2種類の掛け算だと考えると整理できます。内積は順番を変えても同じ、外積は順番を変えると向きが逆、という違いもあります。
Q外積の向きはどうやって決まりますか?(右ねじの法則)
右手を使います。右手の指先を、1本目 a から2本目 b へ回す向きにそろえて握ると、立てた親指の指す向きが a×b です。これが右ねじの法則。ねじを a から b へ回したとき、ねじが進んでいく向き、とも言えます。できた矢印は a とも b とも直角になっていて、内積で確かめると a×b·a も a×b·b もちょうど 0 になります。『なんとなく上』ではなく、右手で向きまできっちり決まるのがポイントです。
Qなぜ a×b と b×a は向きが逆になるのですか?
外積には a×b = −(b×a) という性質(反交換)があるからです。右ねじの法則で、回す向き(a→b か b→a か)を逆にすると、ねじの進む向きも逆になります。だから大きさ(平行四辺形の面積)は同じまま、矢印だけが真うしろを向く。ふつうの掛け算や内積は順番を入れかえても変わりませんが、外積は順番が向きを決めます。トルクやモーターの力で『回る向き』が問題になるのは、この順番の効果が効いているためです。
Q外積の大きさ |a×b| は何を表していますか?
a と b が張る平行四辺形の面積です。式は |a×b| = |a||b|sinθ(θ は2本のなす角)。2本を同じ向きにそろえる(θ=0°、つまり平行)と sin0°=0 で面積はゼロ、直角(θ=90°)で最大になります。三角形なら面積はこの半分 ½|a×b| なので、頂点の座標から土地やパネルの面積を出すのにも使えます。内積が cosθ で『影の長さ』を測るのに対し、外積は sinθ で『張った広さ』を測る、と覚えると対で身につきます。
Q2次元(平面)にも外積はありますか?
平面では、空間のような『面に垂直な矢印』を立てる余地がありません。そのかわり、成分で aₓb_y − a_ybₓ という1つの数を考えます。これは a・b が張る平行四辺形の符号付き面積で、b が a の左回りならプラス、右回りならマイナス。じつはこの値は、2本を z=0 の空間ベクトルとみなして外積を取ったときの z 成分そのものです。だから『2Dの外積』と『3Dの外積』は地続き。平面で面積と向き(回り)を一度に測りたいときに、この符号付き面積が活躍します。
やってみよう
仕上げは手を動かすところから。6本のスライダーで a・b を好きな向きに傾け、ステージをドラッグして視点を回すと、立ち上がる a×b が本当に両方と直角なのか、横からものぞけます。平行四辺形と垂直の証明をオンにして、面積と向きを同時に見るのがおすすめです。
3Dシミュレーション →
a・b を空間内で傾け、視点を回しながら a×b を観察。平行四辺形の面積・垂直の証明(内積0)・右ねじの向きを、立体のまま手で確かめられます。
平面ベクトルと内積 →
cos の内積(重なり)と sin の外積(広さ)は対の関係。答えが数になる内積を、平面の矢印で見直せるページ。2Dの符号付き面積ともつながります。
三角関数 →
|a×b|=|a||b|sinθ に出てくる sin の正体へ。角度から数を取り出す三角関数を、単位円から見直せるページ。
参考文献・出典
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)数学編」数学C「ベクトル」— 空間ベクトル・内積の学習内容
- 空間ベクトルの外積(ベクトル積)・スカラー三重積・行列式の定義(線形代数/ベクトル解析の標準的な教科書)
- トルク・角運動量・ローレンツ力など、力学・電磁気における外積の標準的な扱い(物理の教科書)
最終更新日:2026-06-27 — STEMアトリエ
